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偶然の効用

休日前の夜中にソファでうたた寝することの良さは、
2時や3時といった普通でない時刻に起きたとき、
思いがけない番組をやっていたりすることだ。

あるとき夜中にうたた寝から覚めたら人知れずテレビがついていて、
ぼんやり見ていると、
豊かなブロンドの髪、緑色の目の美しい中年女性が黒いドレスを着て、
舞台のすその方に立って、
くちを大きく開けて知らない言語で歌を歌っていた。

ものすごく気品があってつい見とれていたら、
次に粗野な感じの中年男性、
ショートカットの若いメイドが出てきた。

字幕によれば、粗野な男性は中年女性の知人男爵、
メイドはというと、
なんと中年女性の、息子ほど歳の離れた愛人らしかった!

ふたりきりになると女性は若い愛人にいうのである。

「あなたはやがて私のもとを去ってしまう」と。
オクダヴィアンと呼ばれた青年は、
「そんなことは決してありえない」と若者らしく怒り、
ふたりは喧嘩してしまう。

中年女性はもちろん、
「そんなことは決してありえない」が本当であって欲しいのだけど、
結局、オクタヴィアンは、使いに出された家で、
若い娘とあっさり恋に落ちてしまう。

中年女性は若いふたりのために身を引く。

途中から見たのに、とても感動的だった。

夜中にひっそりやっている番組では、
内容がすっかり終わった一番最後に、
配役やら題名が「とりあえず」といった感じで出てくる。

途中から見た私は、そこで初めて、
「そういう題名だったのかぁ」と知るわけだ。
そのオペラは、
リヒャルト・シュトラウスの「ばらの騎士」だった。

ほかに、ジョニー・デップの映画「ブレイブ」だったこともあるし、
リヴ・タイラーの「オネーギンの恋文」だったこともある。

それらは話題にもならなかったし、
決して自分からは見ないタイプの映画だけど、
なんだか心に残った。

大人になるとあまりびっくりしなくなるのは、
自分の好みを知って、
その中だけで満足するからかも知れない。

日常の中でもっと驚きたいなら、
自分からは決して選ばないようなものに、
偶然ぶつかってみるのもいい。

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